根管治療は、むし歯が歯の奥深くまで進行した際に必要となる処置です。この治療は歯を残すために非常に重要なものですが、治療の質を左右する要素の一つに「ラバーダム」という器具の使用があります。治療を受けた患者さんの中には「初めてだったので違和感があった」という声も稀にありますが、その一方でラバーダムを使わない治療には見過ごせないリスクも存在します。今回は、根管治療におけるラバーダムの役割や必要性、ラバーダムを使用しない場合に起こりうるリスク、治療中の違和感とその対処法について解説します。
1. 根管治療でラバーダムはなぜ使う?役割と必要性
ラバーダムとは、治療する歯を細菌のいる口腔内から隔離するために使用されるゴム製のシート(当院ではゴムアレルギー予防のため、ノンラテックス製のシートを使用)です。歯に固定することで口腔内から治療する歯1本だけを独立する事ができるため、根管治療前に歯の表面やラバーダムシートを消毒でき、無菌的環境下で根管治療に望む事が可能となります。(テレビドラマの医科の手術シーンで術野の部分のみ穴の開いた緑のシートを患者さんに被せて、術野を消毒してからメスを入れ手術をスタートする状態と同じ仕組みです)特に根管治療では、口腔内の細菌が根管内に入り感染を起こしている状態を無菌化する治療のため、新たな細菌が入らない環境で治療を行うことが治療成功には不可欠です。(米国の根管治療の専門医の先生のお話を聞いていると、米国の大学病院でラバーダムを使用せずに根管治療を行うとクビになると発言されていたほど、重要な治療工程の1つとなります。)
➀ラバーダムの装着により治療箇所の清潔さを保ちやすい
根管内は非常に複雑な構造で、約700種類いると言われている口腔内の細菌のうち、種類が多く侵入するほど難治性となることが分かっています。ラバーダムは口腔内の細菌が唾液と共に混入することを抑える効果が期待され、清潔な処置環境の確保に寄与します。
➁視野の確保で丁寧な処置をサポート
治療対象となる歯以外の部位を覆うことで、歯科医師の視野が安定し、器具や薬剤の操作が行いやすくなります。それにより、より丁寧で精度の高い治療を提供することが可能となります。
➂誤飲・誤嚥のリスク軽減
小さな器具や薬剤が口腔内に落ちる、リスクを減らすため、ラバーダムの使用は誤飲・誤嚥の予防が期待されます。
➃根管治療中の粘膜の保護
根管内の細菌を減らす工程では消毒液も使用します。治療中に用いる薬剤が口腔粘膜に触れることで生じる刺激や炎症を避けるためにも、ラバーダムの使用が推奨されています。
このようにラバーダムは、根管治療の質や感染管理の一環として用いられることが多く、処置時の偶発的なトラブル予防にも役立つとされています。
2. ラバーダムをしない場合に起こりやすいトラブル
「保険診療」では根管治療時の保険点数にラバーダムの項目がないため、ラバーダムを使用しないことも多いようです。(当院では完全自由診療のため、海外の専門医に準じて根管治療時には必ずラバーダムを用い、術野を2種類の消毒液で数分ずつ行ってから根管治療をスタートしています)
患者さんが苦手ではないかという歯科医師のイメージ(実は患者さんへのアンケート調査ではラバーダムを装着している方が楽という回答が多い)や準備に要する時間などが理由になる場合もありますが、使用しない場合には以下のような注意点が指摘されています。
➀唾液や細菌が根管内に侵入する可能性
ラバーダムを使わずに治療を行うと、細菌が唾液と共に根管内に入り込むおそれや、術野の消毒ができていない状態のため、治療後の再発リスクが高まると指摘されることがあります。
➁誤飲・誤嚥のリスク
治療中の器具や薬剤が口腔内に滑り込むことで、飲み込んでしまうリスクが増える可能性があります。特に高齢者や子どもでは注意が必要です。
➂治療の効率低下
唾液の混入により、消毒薬や薬剤の効果が低下する可能性があるとされ、治療時間や通院回数が増えるケースもあります。
➃歯科医師の視野や操作性への影響
治療中の視野確保が困難になり、治療の精度が低下する可能性があるとされます。
➄治療後の経過に影響する可能性
根管治療中に無菌的な処置が保たれなかった場合、治療後に痛みや違和感が再発するケースが報告されています。ラバーダムを使用しない場合、お口のなかでさらに無菌化がすることが難しい状態であることはイメージできると思います。
このような理由から、ラバーダムの使用は感染管理や処置の正確性の向上を目的に取り入れられます。
3. 根管治療中のラバーダムに「違和感」を感じる際の対処法
根管治療中のラバーダムに「違和感」を感じる方は特に初回には稀にいらっしゃいます。その背景には、治療中の姿勢やお口の開き方などによる身体的な負担に加え、緊張や不安といった心理的な影響が関係していることがあります。以下に、主な原因と対処法を整理して紹介します。
➀ラバーダム時の口呼吸による心配
ラバーダムを装着する時、口の一部がゴムで覆われるため、口呼吸の方は心配になりますが、周囲に隙間を作ることが可能ですので、呼吸に問題はございません。もちろん、お鼻で呼吸できるとより楽で治療中に居眠りをされる方もおみえになるほどです。
【対処法】
治療前に「鼻呼吸がしづらい」「口呼吸が習慣になっている」などを歯科医師にお伝えいただくと、一回の治療時間を短くするなど、対応が可能です。
➁唾液や喉の違和感
ラバーダムを装着するとお口を軽く開けたまま唾液を飲み込むため、初めのうちは「唾がたまって気になる」「飲み込みにくいかも」と感じる方もいます。
【対処法】
治療中に口腔内の水分を頻繁に吸引してもらう、または事前に喉の不快感があることを伝えておくと、角度調整などで対応可能です。
➂精神的な緊張や恐怖
歯科治療そのものに対して不安を感じている方は、治療が始まると息苦しさや動悸などを感じやすくなります。特にラバーダムは口元が覆われるため、閉塞感から特に初回は不安を感じることがあります。
【対処法】
治療中に手を挙げる合図すれば治療を終了するなど「合図ルール」を設定いたしております。治療前にも、気分が悪くなったらすぐ知らせる旨、確認致しましょう。
➃ラバーダム装着時の違和感や圧迫感
ラバーダムは金属のフレームやクランプで固定されるため、人によっては歯ぐきや唇への圧迫感があり、不快に感じることもあります。
【対処法】
歯ぐきの状態や装着方法によっては、痛みが少ない形態のクランプを選ぶなど、患者さんに合わせた調整が可能です。我慢はなさらず治療前に一緒に確認しましょう。
こうした不快感は、多くの場合、歯科医師との十分なコミュニケーションによって軽減できることがほとんどです。遠慮せずに感じたことをお伝えいただき、患者さんにとって負担の少ない治療環境を一緒に整えましょう。
4. 芦屋の歯医者 LAGOM oral maintenance clinic の根管治療
JR芦屋駅 徒歩1分の歯医者 LAGOM oral maintenance clinic (ラーゴム オーラル メインテナンス クリニック)は、「本当に良い治療を受けたい」「自分の歯を一生大切にしたい」「もう、治療の繰り返しはしたくない」と考える方に、適切な治療法をご提案する自由診療専門の歯科医院です。
当院では完全予約制を採用し、初診カウンセリングでは約90分ほどお時間を確保して、丁寧な診察、現状の詳しい説明、今後必要となる可能性のある検査、治療内容や費用、回数をお伝えすることにより、ご自身の希望も発言できる環境を提供しております。
むし歯や歯周病を未然に防ぐための予防では「初めて知った」「もっと早く知っていたかった」と好評な、個々に応じた原因から解決する情報の提供を行っています。
また、歯の神経を残す「歯髄温存療法」や、「根管治療」では、診断の知識と治療の精度が重要な要素となります。 当院では、可能な限り歯を削らず、抜歯を避けることを目指しています。
専門分野の違うDr2人体制のため、より多くの知識を提供することができるのも当院の特徴です。
院長は20年以上の神経の専門としての臨床経験を持ち、海外の専門医からの研修も積み続け、技術の向上に努めてきました。自由診療専門の歯科医院であるため、幅広い治療方法から選択することができます。
また、JR芦屋駅から徒歩1分とアクセスも良く、実は全体の約4割の方が市外からの方で、遠い方で岐阜や名古屋など東海圏からお越しくださる方もいらっしゃいます。
患者さんの健康を第一に考えた歯科治療を提供し、長期的に歯を守るサポートを行っています。
まとめ
ラバーダムは根管治療において、感染リスクを抑え、治療の精度を高めるために重要な器具です。使用しないまま治療が行われると、唾液による汚染や誤飲など、さまざまなトラブルが起こる可能性があります。また、ラバーダムの装着に関しては、初めて行うときは違和感を感じる場合もありますが、初回の治療時間を短かめにするなどの対応で、2回目以降は逆に治療中の水がお口の奥に来ないため、楽だったと言われる事がほとんどです。無理をせず適切な対処や事前のコミュニケーションで楽に診療を進めていきましょう。
芦屋市で根管治療について不安をお持ちの方は、LAGOM oral maintenance clinic までお問い合わせください。
監修:歯科医師・院長 堀 雅晴