| 治療内容 | 感染根管治療、ダイレクトボンディング |
|---|---|
| 年齢 | 30代 |
| 性別 | 女性 |
| 期間 | 4ヶ月(3ヶ月の治癒経過の確認含む) |
| 費用(税込) | 合計 174,900円(※治療当時) ・感染根管治療110,000円 ・根管治療、再診料 3,300円 3回 ・土台の作製 11,000円 ・最終修復 44,000円 |
| リスク・副作用 | コンポジットレジン部分の咬耗(歯と同様に)、破損、変色が生じる場合があります。これらは天然の歯を削ることなく修理が可能です。 |
1. 患者さんのご紹介(主訴・お悩み)
こちらの患者さんは、歯ぐきの腫れが気になるとのことで来院されました。
当院のホームページをご覧になり、市外からお越しいただきました。過去のむし歯治療を受けた歯に問題が生じており、痛みは特にないものの、歯ぐきがぷっくりと腫れていることを心配されていました。
2. ご来院時の状態と診断
ご来院時にお口の中を確認したところ、右下の奥歯の歯ぐきに、瘻孔(ろうこう)と呼ばれる膿の出口が認められました。レントゲン検査では、歯の根の先に大きな根尖病変が認められ、その他の検査も含めた結果、根尖性歯周炎と診断しました。


さらにお口全体を確認したところ、腫れが見られた歯とは反対側の歯に、しみるような強い痛みを伴う進行したむし歯が見つかりました。
右下の奥歯は病変が大きいものの、現時点では痛みがありませんでした。一方で、反対側のむし歯は痛みが強く、早急な対応が必要な状態でした。
歯の根の先に溜まった膿が、歯ぐきから排出される際にできる細い管や、その出口となるおできのような腫れのことで、身体の自己防衛の結果です。
歯の神経が死んでしまったり、過去に根管治療を行った根の中に細菌が繁殖したりすることで、根の先端の周囲にある組織にまで炎症が広がる病気です。
3. 治療計画
今回の治療計画では、患者さんの自覚症状や「歯の神経を残せるかどうか」という緊急性を踏まえ、治療の順序を慎重に判断しました。
初診時のカウンセリングとレントゲン検査の結果、右下の奥歯には感染根管治療が必要であると判断しました。一方で、反対側のむし歯には強い痛みがあり、神経を保護するためにも早急な対応が必要な状態でした。
そのため、まずは痛みを伴う反対側のむし歯の処置を優先し、その後に右下の奥歯の感染根管治療を進める方針としました。
また、当院では、症例ごとの状態を考慮しながら、可能な範囲で歯質の保存に配慮した治療を行っています。 初回の治療計画の段階から、最終的にダイレクトボンディングで修復することを見据え、治療に必要な部分以外の歯質はできるだけ保存する方針を立てました。
むし歯の進行や過去の不十分な治療によって、細菌に感染してしまった歯の根の管(根管)の内部を十分に清掃・消毒し、再び細菌が侵入しないように密閉する治療のことです。
お口の中で歯の失われた部分に歯科用プラスチック(コンポジットレジン)を直接盛り付け、天然の歯に近い形態や色調を再現する精密修復治療のことです。
4. 治療時
①反対側のむし歯治療を優先
まず、しみるような強い痛みがあった反対側のむし歯治療を優先しました。神経を残せるかのギリギリの判断が必要な状態だったため、右下奥歯の感染根管治療よりも先に処置を行いました。
②右下奥歯の感染根管治療を開始
反対側のむし歯処置を終えた後、右下奥歯の感染根管治療を開始しました。
ラバーダムを装着して術野の消毒を行い、唾液や細菌の侵入を防ぎ、既存の詰め物やむし歯を除去し、根管内の消毒と貼薬を行いました。歯の神経はすでに失活(神経部分が感染して一部空洞の状態)していました。

③複雑な根管形態を確認し、拡大形成
対象となった歯は、やや特殊で複雑な構造(近心根に3つの根管がある)をしていました。
根管の見落としや清掃不足が再感染につながるため、慎重に確認しながら処置を進めた結果、2回目の来院時には歯ぐきの腫れである瘻孔が消失していました。
その後、さらに2回ほど根管治療を行い、根管の長さを測定しながら拡大形成(根管を器具で広げて感染除去と形を整える処置)を進めました。
④約3か月の経過観察
清掃・消毒後はすぐに根管充填を行わず、根管内に薬を入れた状態で仮のふたをし、約3か月経過を観察しました。病変の改善や症状の変化を確認するためです。
⑤根管充填後、ダイレクトボンディングで最終修復
3か月後に良好な経過を確認したうえで、根管充填を行いました。

最終修復前には、歯列全体の噛み合わせ、治療歯にかかる負担、対合歯との関係、残っている健康な歯質の量などを再度、総合的に確認しました。残存歯質の状態を総合的に評価した結果、ダイレクトボンディングによる修復が可能と判断し、当初の計画通り最終修復を行いました。

治療する歯の周囲に装着するゴム製のシートのことです。唾液に含まれる細菌が根管内に侵入するのを防いだり、お口の湿度を遮断することにより乾燥環境を作り、接着治療の精度を高めるために使用されます。
根管治療によって清掃・消毒された根の管の中に、再び細菌が繁殖する隙間を作らないよう、専用の詰め物を緊密に充填して密閉する処置のことです。
5. 治療後・予後


治療終了から2年半が経過した定期検診の際、レントゲン写真で経過を確認しました。術前に見られていた根尖部の透過像は治癒が認められ、良好な経過を維持しています。
健康な歯質を多く残したうえでダイレクトボンディングによる修復を行い、現在も安定した状態が維持されています。
また、隣接するエナメル質の初期う蝕は予防により進行を止め管理されています。
当院では、治療後の歯の寿命を延ばすために、健康な歯質を1ミリでも多く残すことを重要視しています。根管治療の段階から最終的な修復方法まで見据えた治療を行うことにより、噛み合わせの部分のエナメル質や歯の内部の象牙質をより多く残すことができ、根管治療中の各ステップにおいても治療効率よりも歯質の保存を優先しています。また、一般的に根管治療後には歯を多く削り被せ物になる事が多いのですが、健康な歯質をできるだけ削らず(被せ物にせず)元の歯の形態を回復することができるダイレクトボンディングを治療の選択肢に入れております。
歯ぐきの腫れが気になる方や、大切な歯をできるだけ削らず残したいとお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。
また、根尖の病変が大きい場合は、抜歯を宣告されることがありますが、原因を調べることにより、保存できることも多くありますので、抜歯前にご相談ください。
朝日大学 歯科保存学分野 所属
専門:歯内療法学(エンドドンティスト)
・歯の神経の治療(神経の保存を含む)
・助教(2008〜2019)
・非常勤教員(2020〜)
中部歯内療法学会 理事(2010〜2019)
大学の専門治療と並行して、愛知・岐阜・福井の歯科医院にて勤務
【主な年間セミナー受講歴】
・藤本研修会 歯内療法学コース(スウェーデン王立イエテボリ大学公認歯周病・歯内療法専門医)
・歯周病学コース(スウェーデン王立イエテボリ大学公認歯周病専門医)
・藤本研修会 咬合・補綴コース(アメリカ インディアナ大学 米国歯科補綴専門医)
・藤本研修会 LOT(部分矯正)コース(アメリカ ウェストバージニア大学 MOS顎関節学)
・EPSDC イエテボリ大学 診断学コース(スウェーデン王立イエテボリ大学公認歯周病・歯内療法専門医)
・EPSDC イエテボリ大学 矯正学コース(スウェーデン王立イエテボリ大学 MOS矯正学)
藤本研修会 https://www.fujimoto-kensyukai.com
EPSDC https://epsdc-course.instatry.jp
【所属学会】
日本歯科保存学会 http://www.hozon.or.jp
日本歯内療法学会 https://jea-endo.or.jp
日本歯周病学会 https://www.perio.jp
日本顕微鏡歯科学会 https://kenbikyoshika.jp
【資格など】
歯科医師
日本歯科保存学会 専門医 http://www.hozon.or.jp/list
歯科医師臨床研修 指導医
第二種滅菌技士試験合格(日本医療機器学会)
